コイルのエネルギーとは

学校で、自己インダクタンス\(L\)[H]のコイルに対して電流\(I\)[A]が流れているとき、そのコイルが持つエネルギー\(U\)は、
\[ U = \frac{1}{2} L I^{2}\]
と習う。これはなぜであろうか。

コイルのエネルギーを証明するための準備

1. キルヒホッフの第二法則

回路内の一つのループに対して、
$$\Sigma起電力 = \Sigma電圧降下$$
となるのがキルヒホッフの第二法則である。

2. エネルギー保存則

この世の物理法則の一つの大きな柱として、エネルギーは絶対になくならないし、無から生まれたりはしないという法則がある。これは実験として否定もされていない、物理を支える非常に重要な法則である。

3. オームの法則

電流\(I\)[A]が抵抗値\(R\)をもつ抵抗に流れたとき、「電流が流れた向きに」\(RI\)[Volt]だけ電圧が下がる。これをオームの法則という。

4. コイルの自己誘導

コイルに流れている電流$I$が時間変化したとき、「電流が流れた向き」を正方向としたら、
\[ V_{emf} = – L \frac{dI}{dt}\]
の誘導起電力を持つ。すなわち、電流の変化を妨げるような方向に起電力が発生する。ここで\(L\)とはコイルの自己インダクタンスと呼ばれる物理量(単位[H]ヘンリー)である。

5. 電池のする仕事率

電池は電荷をより高い電位のところに持ち上げる働きがある。[Volt]=[J/C]という単位であるから、電流\(I\)[A=C/s]が流れているときは、\(IV\)[J/s]の仕事率があると計算できる。(仕事の単位は[J]であり、それを単位時間あたりにしたものが仕事率[J/s]であった)

コイルのエネルギーの証明

1. 抵抗・コイル・電池の回路を考える

起電力\(V\)[Volt]、抵抗値\(R\)[Ohm]の抵抗、自己インダクタンス\(L\)[H]が直列で繋がれていることを考える。

2. キルヒホッフの第二法則を立てる

キルヒホッフの第二法則を回路に対して適用する。電流が回路全体に\(I\)[A]流れているとすると、
\[V – L \frac{dI}{dt} = RI\]
となる。両辺に\(I\)をかけると、
\begin{align*}
IV – LI \frac{dI}{dt} &= RI^{2} \\
IV – \frac{d}{dt} (\frac{1}{2} LI^{2}) &= RI^{2} \\
IV &= RI^{2} + \frac{d}{dt} (\frac{1}{2} LI^{2})
\end{align*}
となる。左辺は「電池がする仕事率」であった。エネルギーはなくならないから、電荷に対してなされた仕事はどこかに使われるなどするはずである。実際、右辺第二項の\(RI^{2}\)は「抵抗における消費電力」にあたる。そして右辺第一項の時間微分内の\(\frac{1}{2} LI^{2}\)こそがコイルに関するエネルギーには違いない!たとえば、
\[ 100 = \frac{d}{dt}(\frac{1}{2} LI^{2}) + 10\]
という内訳になっていたとすれば、\(\frac{d}{dt}(\frac{1}{2} LI^{2})\)は「コイルのエネルギーの時間変化」を表すわけだから、それが90[J]だけ単位時間あたりに増えるということを意味する。こうして、電池がした仕事の100[J]は抵抗で消費されなかった分がコイルに移動しているということがわかるわけだから、やはり「エネルギー」を蓄えていると考えられるであろう。エネルギーはなくならないはずだからである。