さて、今日は高校一年生に向けて(中3の頃から)やってきた特殊相対性理論の講義が一通り終わりました。その最終講義の一部を紹介いたします。

黒板その1

特殊相対性理論を取り入れると、通常の力学では重要な法則となっていた「運動量保存則」が一見成立していないように見えます。これは直感的には微妙な状況です。それを打破するために考えられたのが、「同じ質量と考えていたものは、自分から見たときの速さによって質量が異なるのでは?」という大胆な仮定です。

黒板その2

この仮定のもと、運動量保存則が成立するように速度vのときの質量m(v)を求めると、

$$m(v) = \gamma m(0)$$

と表現できます。ここで$$\gamma = \frac{1}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^{2}}}$$です。γはどんなvの値でも1より大きい値ですので、自分から見て何らかの速度vを持つ物体は、静止しているときの速度に比べて大きな質量になってしまう、ということがわかります。つまり、「動いている物体は太ってみえる」ということになるわけです。面白いですね。このm(o)のことを静止質量と呼びます。

ここまでの議論はあくまで妄想に過ぎません。なぜなら、「運動量保存則が成立するためには、質量m(v)がこのように表現されるべきである」ということを計算して見たに過ぎないからです。これの正しさを確認するのが実験です。物理学は最後に実験に頼らなければなりません。実際にこの正しさを証明した実験がコンプトン散乱です。

この実験では電子に対してX線(光子)を照射したのですが、この2粒子の衝突のエネルギー保存則や運動量保存則を議論するのに特殊相対性理論が必要になってしまいます。そして実際に特殊相対性理論を用いて議論した結果得られる理論値が、コンプトン散乱における実験結果を非常によく説明しました。これが特殊相対性理論の正しさを裏付けることになりました。

さて長々と書きましたが、これに核エネルギーの話を少々して今回の相対性理論の講義を終えました。本来電磁気学と絡めた話もすると面白いですが、いまだ電磁気学を学んだことのない高校一年生に対して特殊相対性理論の面白さを語るにはとりあえずここまでがキリが良いと考え、ここで一旦打ち切りました。今後は高校物理の講義を高いレベルから行っていく予定です。