仙台物理実験塾 PeX

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カテゴリー: 高校物理

自己インダクタンスとは


準備

1. 円電流中心の磁場

円形コイル(半径\(a\))に電流\(I\)[A]が流れているとき、その中心における磁束密度の大きさは、
\[B = \frac{\mu_{0}I}{2a}\]
であった。ただし\(\mu_{0}\)とは真空の透磁率である。これは高校物理では導出せず使って良い。

2. 磁束

ある面の面積を\(S\)とおき、そこに磁束密度\(B\)の磁場が一様に垂直に存在するなら、このコイルを貫く磁束\(\Phi\)は、
\[\Phi = BS \]
と計算できる。仮に磁場が面に対して垂直に貫いていない場合は、面に対して垂直な磁場の成分を取り出して上に適用するのであった。

自己インダクタンスの定義

コイルに電流\(I\)を流すと磁場\(B\)を作る。この磁場はコイルの面\(S\)を貫いており、特にコイルの中心においては
\[B = \frac{\mu_{0} I}{2a}\]
と書けることは上で触れた。しかし、コイルの中心以外では上のようにはかけない。したがって、このコイルを貫く磁束を計算するのは少々手間がかかる。しかし、何れにしても、「電流\(I\)が大きくなればそれに比例して磁束も増えていく」ということは容易に想像がつくと思う。したがって、
\[\Phi = L I\]
というように磁束は電流に比例した形で書ける。この比例定数\(L\)[H](ヘンリー)を自己インダクタンスという。磁束の単位は[Wb](ウェーバー)で、電流の単位は[A](アンペア)であるから、自己インダクタンスの単位は[Wb/A]であるが、これを[H](ヘンリー)と呼ぶことにしている。

自己インダクタンスの意味

解釈1

定義式から明らかであるが、自己インダクタンス\(L\)が大きければ、それだけ同じ電流\(I\)に対しても貫く磁束\(\Phi\)が大きくなるわけだから、磁場を作るある種「性能」のようなものとも考えられる。自己インダクタンスが大きければそれだけ大きな磁束を作ることができるというわけだ。

解釈2

inductance(インダクタンス)という言葉はinduceからきている。Longman Dictionaryによれば、induceの3つ目の意味として”to cause a particular physical condition”とある。要するに「何らかの(身体的)状態を引き起こす」という意味である。ではコイルが何を「引き起こす」というのか。コイルに流す電流\(I\)を変化させると、ファラディの電磁誘導の法則によって(別ページで解説予定)、「コイル自身が起電力になるように引き起こされてしまう」のである。この「自分自身」というところから「自己」という日本語を用い、「(電流変化によって)引き起こされてしまう」ということからinduceをとって「インダクタンス」と言っているのであろう。

実際、コイルによる誘導起電力の大きさは\(L\frac{dI}{dt}\)であるから、\(L\)が大きければそれだけ起電力の強さが増すことになる。つまり、「自分自身で(起電力としての性質を)引き起こす力」が強いと言える。

物理の勉強の仕方


物理学とはどんな学問か

物理は自然現象を数学を用いて解き明かす学問です。近代的な物理は数学を当然のように扱う学問となりました。客観的に誰が見ても正しいというためには、客観的な「値」こそが正しさの指標になります。ここに数学が伴ってしまうのは必然でしょう。数を扱うのですから。こうして、自然現象を数学的に記述して説明をしようとするのが物理学という学問なります。

物理学に必要な力

1. 直感

直感とはたとえば、単振動の振動中心では速度が最大になり、端では0になる。などと、物理的現象についてのイメージをある程度もつことです。物理的直感を日頃から付けていかないと、「自然現象ありえない結果」が出てきたときに「ありえない」と判断することが難しくなります。

2. 数学知識

物理学(最早science全体)は数学を道具として用い自然現象を解き明かす学問です。なので、難しい数学の扱いにも慣れて計算できるようにする訓練が別に必要です。たとえば、磁束の計算で一般的には\(BS\)(正確には\(BS\cos{\theta}\))という風に習います。しかし実際に磁束を正確に計算するには、「ある閉曲面を無限小の面積素片に分割し、そこに立てられる法線ベクトルと磁束密度の内積を積分する」という操作が厳密には必要です。とは言っても、初めて学ぶ人にそう教えたところでポカンとしてしまうでしょう。ですから、初めはある程度単純化した状態で理解してもらい、「螺旋的に」ふたたび戻ってきて学び直す。そういう、言ってしまえば「メンドウ」な作業が物理学では必須です。

3. 計算力

私のかつての恩師山本義隆先生は、学生時代に江沢洋先生の東大での量子力学演習の講義に出席しておられ、そこで多くのことを学ばれたと複数の著書で触れています。最近出版された『量子力学的世界像』(日本評論社, 江沢洋・上條隆志 編)においてこう述べています。

(以下引用)『量子力学的世界像』(p283より)

    「…与えられた問題をとおり一遍のやり方で解いて満足するのではなく、自分で話を広げ、自分で問題をさらに設定するように、促されていたように思う。…こうして私たちは、すくなくとも私は、物理の学習とは、思いついたことは何であれ計算してみることだと学ぶことになった。必ずしも一通りの正解があるわけではなく、思い切って自由に様々な角度から考えてみることが重要であり、そしてその考えるということは、労力を厭わずに実際に手を動かして計算してみること、その上で計算結果を物理的に吟味することだということを学んだのであった。

したがって、計算を実際に「やりきる」という力がどうしても必須になります。計算が間違えば物理的な吟味にも曇りがでます。計算がやりきれなければ吟味すらもできません。

物理学に必要な力をつけるために

1. 直感をつけるために

直感を養うには、日頃から物理的な現象について考えることはもちろん、実験を通して物理を学ぶことが重要です。しかし現在の高校においては、設備費・実験に対する知識をもった教員が全員というわけでもないため、実験をしない学校が多いです。これでは、物理学が実験を伴わない「ただの座学」になってしまいます。物理を学ぶ初期段階においては、実験を用いて教科書レベルのことを検証していくつもりで学ぶ姿勢が重要になります。

2. 数学知識をつけるために

これは現状の高校カリキュラムにおいては難しいです。たとえば、高校物理は微積分を用いた数学を扱う方が見通しよく計算することができます。しかし、実際に微積分を学ぶのは公立高校では受験の直前くらいで、もはや高校3年生なのです。高校3年生から物理を学び直している暇は正直ありません。したがって、やはり「分かっている人」から管理されつつ、数学の学びを早めに拡げていくことが大切になります。自学自習で微積分まで高校数学を学び切れる人は、先生の手を借りずとも問題ないでしょう。

3. 計算力をつけるために

これは数学知識とは異なり、純粋な計算力を養うことですから、日頃の数学の学習において計算をしっかりやりきる力をつけていくことが重要となります。とくに数学2・B・3においては計算が複雑になります。センター試験レベルで言えばベクトルの内積を含む計算や、数列の一般項の和の計算であったりといった基本的な計算を確実にできる基礎訓練を積む必要があるでしょう。

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コイルのエネルギーの証明


コイルのエネルギーとは

学校で、自己インダクタンス\(L\)[H]のコイルに対して電流\(I\)[A]が流れているとき、そのコイルが持つエネルギー\(U\)は、
\[ U = \frac{1}{2} L I^{2}\]
と習う。これはなぜであろうか。

コイルのエネルギーを証明するための準備

1. キルヒホッフの第二法則

回路内の一つのループに対して、
$$\Sigma起電力 = \Sigma電圧降下$$
となるのがキルヒホッフの第二法則である。

2. エネルギー保存則

この世の物理法則の一つの大きな柱として、エネルギーは絶対になくならないし、無から生まれたりはしないという法則がある。これは実験として否定もされていない、物理を支える非常に重要な法則である。

3. オームの法則

電流\(I\)[A]が抵抗値\(R\)をもつ抵抗に流れたとき、「電流が流れた向きに」\(RI\)[Volt]だけ電圧が下がる。これをオームの法則という。

4. コイルの自己誘導

コイルに流れている電流$I$が時間変化したとき、「電流が流れた向き」を正方向としたら、
\[ V_{emf} = – L \frac{dI}{dt}\]
の誘導起電力を持つ。すなわち、電流の変化を妨げるような方向に起電力が発生する。ここで\(L\)とはコイルの自己インダクタンスと呼ばれる物理量(単位[H]ヘンリー)である。

5. 電池のする仕事率

電池は電荷をより高い電位のところに持ち上げる働きがある。[Volt]=[J/C]という単位であるから、電流\(I\)[A=C/s]が流れているときは、\(IV\)[J/s]の仕事率があると計算できる。(仕事の単位は[J]であり、それを単位時間あたりにしたものが仕事率[J/s]であった)

コイルのエネルギーの証明

1. 抵抗・コイル・電池の回路を考える

起電力\(V\)[Volt]、抵抗値\(R\)[Ohm]の抵抗、自己インダクタンス\(L\)[H]が直列で繋がれていることを考える。

2. キルヒホッフの第二法則を立てる

キルヒホッフの第二法則を回路に対して適用する。電流が回路全体に\(I\)[A]流れているとすると、
\[V – L \frac{dI}{dt} = RI\]
となる。両辺に\(I\)をかけると、
\begin{align*}
IV – LI \frac{dI}{dt} &= RI^{2} \\
IV – \frac{d}{dt} (\frac{1}{2} LI^{2}) &= RI^{2} \\
IV &= RI^{2} + \frac{d}{dt} (\frac{1}{2} LI^{2})
\end{align*}
となる。左辺は「電池がする仕事率」であった。エネルギーはなくならないから、電荷に対してなされた仕事はどこかに使われるなどするはずである。実際、右辺第二項の\(RI^{2}\)は「抵抗における消費電力」にあたる。そして右辺第一項の時間微分内の\(\frac{1}{2} LI^{2}\)こそがコイルに関するエネルギーには違いない!たとえば、
\[ 100 = \frac{d}{dt}(\frac{1}{2} LI^{2}) + 10\]
という内訳になっていたとすれば、\(\frac{d}{dt}(\frac{1}{2} LI^{2})\)は「コイルのエネルギーの時間変化」を表すわけだから、それが90[J]だけ単位時間あたりに増えるということを意味する。こうして、電池がした仕事の100[J]は抵抗で消費されなかった分がコイルに移動しているということがわかるわけだから、やはり「エネルギー」を蓄えていると考えられるであろう。エネルギーはなくならないはずだからである。

【大学受験:熱力学】1.内部エネルギー変化はどうしてnCvΔTとかける?

熱力学ワンポイントクイズ!その1です。みなさん、あまりに自然に、

$$ \Delta U = n C_{V} \Delta T $$

を使っていませんか?しかしこれは常に成り立つ式ではございません。理想気体であるときには成り立つ関係式です。

では、どうして理想気体であればこの関係式が成り立つのでしょうか?問題を解くだけでは実用上これさえ押さえておけば何とかなることも多いですが、時には振り返ってみましょう。

解説図1

上図のようにして、P-V図上で始めの状態\(S_{0}\)を定め、そこでの温度を\(T_{0}\)とします。そして、その温度よりも少し高温の\(T_{0} + \Delta T\)の等温線を引き、そこでの異なる三状態を\(S_{1}, S_{2}, S_{3}\)とします。

ここで熱力学の法則の中で非常に重要なものがあります。それは、「理想気体の内部エネルギー\( U\)は温度のみの関数であり、\( U=U(T)\)と書くことができる。」ということです。これが今回の核になっています。

これはすなわち、温度さえ保てば、他のどんな物理量を変化させても内部エネルギーは一定ということです。非常に強力です。このことから、

解説図2

上図のようにして内部エネルギー変化を\( \Delta U_{01}, \Delta U_{02}, \Delta U_{03} \)とおくと、

$$
\begin{align}
\Delta U_{01} &= \Delta U({T_{0} +\Delta T}) – \Delta U(T_{0}) \\
\Delta U_{02} &= \Delta U({T_{0} +\Delta T}) – \Delta U(T_{0}) \\
\Delta U_{03} &= \Delta U({T_{0} +\Delta T}) – \Delta U(T_{0})
\end{align}
$$

となる。したがって、

$$
\Delta U_{01} = \Delta U_{02} = \Delta U_{03} \tag{1}
$$
とかけることになる。

さて、初めには言及していませんでしたが、\(S_{0}\)から\(S_{1}\)への状態変化を「定積変化」としましょう。定積変化においての熱力学第一法則は、

$$
\Delta U_{01} = Q – W
$$
において、\(W=0\)であり、定積モル比熱\(C_{V}\)を使えば\(Q = n C_{V} \Delta T\)と書くことができますから、

$$
\Delta U_{01} = n C_{V} \Delta T \tag{2}
$$
となる。ここで、式(1), (2)から、

$$
\Delta U_{01} = \Delta U_{02} = \Delta U_{03} = n C_{V} \Delta T
$$
とかけたことになる。したがって、\(\Delta T\)だけ上がるどのような状態変化に対しても、内部エネルギーの変化は、

$$
\Delta U = n C_{v} \Delta T
$$
とかけたことになる。証明終了です。

まとめると、

全体の流れ

このようになっています。いかがでしたか?

皆さんの理解の一助となれば幸いです。

センター試験物理解説動画集

センター試験物理の解説動画を定期的にアップロードしています。
1-1は「第1問の問1」の略です。

 

 

 

2018年 1-1 1-2 1-3 1-4 1-5
2-1 2-2 2-3 2-4
3-1 3-2 3-3 3-4 3-5
4-1 4-2 4-3 4-4 4-5
5-1 5-2 5-3
6-1 6-2
2017年 1-1 1-2 1-3 1-4 1-5
2-1 2-2 2-3 2-4
3-1 3-2 3-3 3-4 3-5
4-1 4-2 4-3 4-4 4-5
5-1 5-2 5-3
6-1 6-2
2016年 1-1 1-2 1-3 1-4 1-5
2-1 2-2 2-3 2-4
3-1 3-2 3-3 3-4 3-5
4-1 4-2 4-3 4-4 4-5
5-1 5-2 5-3
6-1 6-2
2015年 1-1 1-2 1-3 1-4 1-5
2-1 2-2 2-3 2-4
3-1 3-2 3-3 3-4 3-5
4-1 4-2 4-3 4-4 4-5
5-1 5-2 5-3
6-1 6-2
2014年 1-1 1-2 1-3 1-4 1-5
2-1 2-2 2-3 2-4
3-1 3-2 3-3 3-4 3-5
4-1 4-2 4-3 4-4 4-5
5-1 5-2 5-3
6-1 6-2

どうして人工衛星は回っていられるのか


人工衛星。私たちの生活の上で欠かせないものです。とはいっても、具体的にどのような役割をしているかご存知でしょうか。以下まず役割を解説してみましょう。

人工衛星の役割とは?

JAXA(http://www.jaxa.jp/projects/sat/)のページをみると、さまざまな人工衛星が活動中・開発中であることが見て取れると思います。

①天体を観測するため

地球以外の天体、たとえば太陽などを観測するためです。このような人工衛星を「天文観測衛星」と呼びます。天文観測衛星は宇宙空間に配置し、大気圏を避けています。なぜなら、太陽などからやってくる光(赤外線・紫外線・可視光線)は大気圏に存在する粒子に衝突することで吸収されてしまったり、散乱されること(弾かれるということ)で本来の情報を失ってしまうからです。太陽からの光をダイレクトにありのままに受け止めたいのであれば、宇宙空間に置く方が正確な測定ができるわけです。

【どうして大気圏外に置くべきか】

 

2018年7月9日現在上記JAXAのページによれば、太陽を観測する「ひので」、惑星を観測する「ひさき」、宇宙嵐とそれにより生成消滅を繰り返している高エネルギー電子の解明を試みる「あらせ」、地球の磁気圏を測定し太陽からのエネルギーの流れを読むための「GEOTAIL」などがあります。

 

②地球を観測するため

これがもっとも私たちに馴染みのある人工衛星でしょう。なぜなら、毎日ニュース番組などでみる天気予報における情報のもとは、「地球観測衛星」と呼ばれる人工衛星によるものだからです。地球観測衛星は主に二つの用途があり、一つはある地点の上空で動かないように配置することで気象情報などを得ようとする用途です。日本の上空には「ひまわり8号」が存在し、私たちに雲のうごきなどを伝えてくれています。もう一つは、より地球に近づいたような位置にすることで、地球の広域の詳細情報を掴もうとする用途です。

 

③通信・放送のため

スカパーJSAT(https://www.jsat.net/jp/satelliteCommunications.html)などの通信・放送サービスを行う民間企業が主に利用しています。放送データなどを、放送局から家庭毎に通信して渡して行くのはあまりに非効率です。スカパーはCMなどでもご存知の方が多いかと思いますが、放送番組です。放送局は放送データを一挙に保有している衛星にアップロードします。そして、そのデータをスカパーをご覧になるお客様方へ向けて、上空から一気に送信するのです。非常に効率的になります。

 

④測位のため

これも私たちが大変お世話になっている機能で、「測位衛星」と呼ばれます。いわゆるGPS (Global Positioning System)であり、Google Mapsで目的地を探すときや、カーナビで役に立っています
GPSとはそもそもアメリカが保有する衛星のことであり、携帯電話やカーナビにはGPSからの電波を受信できるようににするための「受信機」が搭載されています。だから、Google Mapsなどで私たちの位置を特定することができるのです。とても便利なGPSですが、先にも述べたようにアメリカが保有するもので、実は軍事目的のために作られたものです。したがって、何か世界的によくないことが起こったりした時は、アメリカは自分の衛星なのですから、自分たちの思うような使い方に絞り私たちが普段使うようなことに使えなくなる可能性があります。では日本も測位衛星を打ち上げればいいではないかと思うかもしれませんが、コストなどを考慮すると非常に維持するのに大変な代物で、なかなか手が出ないのです。なので、日本は基本的には外国の測位衛星に頼っています。アメリカの「GPS」以外では、ヨーロッパ諸国による「ガリレオ」、中国の「北斗」、ロシア連邦の「GLONASS」などがあります。

他にもいくつかの用途はありますが、主だって私たちの生活に影響するものは以上になります。

人工衛星はなぜ回っていられるのか

直感的な答えを述べましょう。私たちがキャッチボールをするとき、投げたボールは山なりを描いて落ちていきます。しかし、肩が良い人は真っ直ぐ、力強く投げることができるでしょう。とはいっても、野球選手ほどの肩でもボールはしっかり落ちていきます。では、それが人間にはできないほどの速さで投げれたとしたら、どうなるでしょうか。やはりどんなに速くても地球からの重力がありますから、ボールは落ちます。しかし、あまりにも速すぎて落ちるに落ちれない、そんな状況が生まれる気がしませんか?そして投げたボールは地球をぐるっと一周し、自分の頭の後ろにやってくる。一人キャッチボールができてしまうわけですね(笑)ちなみに、この速すぎる「速さ」のことを「第一宇宙速度」といいます。

【人工衛星が回る原理】

空気抵抗などを無視した簡単な計算によれば、第一宇宙速度はおよそ7.9[km/s]です。1秒に7.9km進むという速さです。42.195kmのフルマラソンをわずか6秒程度で終わらせてしまうほどの速さです。ありえません。ありえない速さです。よって、一人キャッチボールは無理です(笑)

冗談はさておき、直感的には人工衛星はこのような原理で地球の上空を回り続けています。落ち続けているのです。速すぎて落ちてこないだけなのです。

 

地球周回軌道について

人工衛星の役割によって分類するのはすでに書いた通りです。一方、別の捉え方で人工衛星を分類することもあります。それが、「地球をどのように回っているか」=「地球周回軌道」です。

①高いか低いか

とても分かりやすい分類です。地上からどれほどの高さにいるかということで分類をします。
低軌道は1000km以下、それ以上を中軌道、さらに36,000km以上を高軌道と呼びます。

 

②赤道面から軌道がどれだけ傾いているか

これを「軌道傾斜角」と呼びます。この定義から、0度以上90度以下の値で指定されることがわかるでしょう。

 

③地球にもっとも近づいた時の距離・遠ざかった時の距離

一般に二つの物体の間に及ぼしあう重力によって描かれる軌道は楕円軌道であり、円軌道とは限りません。楕円軌道のとき、必ず地球にもっとも近づいた瞬間と、遠ざかった瞬間が存在します。それぞれ、「近地点高度」、「遠地点高度」と呼びます。仮にも近地点高度=遠地点高度だった場合、それは楕円軌道の中でも特殊な円軌道というものになるわけです。たとえばハンマー投げをする選手がハンマーをもってぐるぐると回しているとき、そのハンマーの先端の球の軌道は、楕円でしょうか、もっといえば円でしょうか?

 

④どれくらいの時間をかけて地球を一周しているか

これを周期と呼びます。分かりやすい分け方ですね。

さて実際にJAXAのページ(http://www.jaxa.jp/projects/sat/slats/index_j.html)から地球観測衛星「つばめ」の情報を見てみましょう!

今回は軌道の高さで分類していますね。1,000km以下なので、これはいわゆる「低軌道」ということになるわけですね。

 
参考文献:谷口義明 (2013)『新天文学事典』講談社

【高校生・高専生用】単振動の考え方 (1)


単振動は難しいと感じたことはないだろうか。当時高校生の頃は単振動がまったくよく分からず、どうして周期は\( T = \frac{2 \pi}{\omega} \)になるのか。角振動数\( \omega \)って何なんだ…。など、テストで出たらお終いのようなレベルの理解度であった。私がそもそも勤勉家でないのも災いしているが(周りの人でできる人は少なからず居ましたからね)、その単振動に対する疑問が完全に氷解したのが浪人生の頃。この記事では、単振動に関する話をいくつか細切れにし、私がつまずきの段階から完全な理解に達したプロセスのようなものを伝えられたらと思う。

そもそも単振動とは何か

単振動は、ある物体の運動方程式が以下の形式で表される運動の総称である。

\begin{eqnarray}
m \frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – k x
\end{eqnarray}

ここで\( m \)は物体の質量(正の定数)、\( \frac{d^{2}x}{dt^{2}} \)は物体の加速度、\( k \)はばね定数(正の定数)、\( x \)は物体の位置( \( x \) 座標)を表している。この方程式(正確には微分方程式)で表される運動は、\( m \)や \( k \)がたとえどんな値であろうが単振動という運動に分類される。

運動を調べるとは運動方程式を解くこと

さて、単振動の運動方程式は\( m \frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – k x \)なのだが、この運動を実際に調べるには運動方程式を解かねばならない。そこが少し複雑なため、高校生や高専生の1, 2年生には扱いにくいのである。ここで紹介するのはその複雑な方なのだが、プロセスは複雑そうに見えても、これらの記事を乗り越えられれば単振動に対する見え方は明快になるであろう。

実際に運動方程式を解いてみる

ここでは数学の微分の知識が必要だ。微分がわからない人は(こちらの記事:後投稿)をまず参照して何となく理解してもらったらまたこちらに戻ると良い。このとき、必ず紙と鉛筆を持ってこの記事と共に一緒に計算を進めること。物理学は自分の頭で考え、計算を実際に手を動かしながら納得して行く学問である。ただ眺めて考えるのはやめにしよう。

\begin{eqnarray}
m \frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – k x
\end{eqnarray}

を変形すると、

\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – \omega^{2} x
\end{eqnarray}

とまとめることができる。ここで、

\begin{eqnarray}
\omega = \sqrt{ \frac{k}{m} }
\end{eqnarray}

と定義した。これをなぜ?と思う人も居られると思うが、後で説明が楽になるための方便に過ぎない。ひとまず騙されたと思って計算していこう。この方程式を言葉に直すと、

「物体の位置( \(x\)座標)を二回繰り返して\(t\)について微分すると、自身\(x\)にさらに(\( – \omega^{2}\))をかけたものが出てくる」

ということだ。不思議なものだ。ある量を2回も微分していると言うのに、また自分自身に似たようなものが出てくると言うのだから。実は、このような量(関数)は、高校生では3年生に扱う三角関数の微分を理解していれば直感的に分かる。数学定理:

\begin{equation}
\left\{
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} & \sin{t} = \cos{t} \\
\frac{d}{dt} & \cos{t} = -\sin{t}
\end{aligned}
\right.
\end{equation}

から、

\begin{eqnarray}
\frac{d^{2}}{dt^{2}} \sin{t} & = & \frac{d}{dt} \Bigl( \frac{d}{dt} \sin{t} \Bigr) \\
& = & \ – \sin{t}
\end{eqnarray}

となる。おや?これは何だか…

$$\frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – \omega^{2} x$$

の形に似ていないだろうか。この式で\( \ x(t) = \sin{t} \)とし、\( \omega^{2} = 1 \)とおいた式そのままだ。ここで次の数学公式(合成関数の微分法:後投稿)を使い、また一工夫してみる。

\begin{equation}
\left\{
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} \sin{\omega t} & = \omega    \cos{\omega t} \\
\frac{d}{dt} \cos{\omega t} & = \ – \omega \sin{\omega t}
\end{aligned}
\right.
\end{equation}

であるから、

\begin{eqnarray}
\frac{d^{2}}{dt^{2}} \sin{\omega t} & = & \frac{d}{dt} \Bigl( \frac{d}{dt} \sin{t} \Bigr) \\
& = & \frac{d}{dt} \Bigl( \omega \cos{\omega t} \Bigr) \\
& = & – \omega^{2} \sin{\omega t}
\end{eqnarray}

と計算できる。なんとこれは、

$$\frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – \omega^{2} x$$

の形そのものだ。従って、この\( x(t) = \sin{\omega t} \)というものが求める答えになる気がする。これは正しいともいえるが、正確には「答えの一つ」である。なぜなら、例えば\( \ x(t) = 2 \sin{(\omega t + 1)}\)というものも、

\begin{eqnarray}
\frac{d^{2}}{dt^{2}} x(t) & = & \frac{d^{2}}{dt^{2}} \Bigl( 2\sin{(\omega t + 1 )} \Bigr) \\
& = & \frac{d}{dt} \Biggl( \frac{d}{dt} \Bigl( 2\sin{ (\omega t + 1)} \Bigr) \Biggr) \\
& = & \frac{d}{dt} \Bigl( 2\omega \cos{(\omega t + 1)} \Bigr) \\
& = & \ – 2\omega^{2} \sin{(\omega t + 1)} \\
& = & \ – \omega^{2} \Bigl( 2\sin{(\omega t + 1)} \Bigr) \\
& = & \ – \omega^{2} x(t)
\end{eqnarray}

となり、同様に単振動の方程式の位置\( x(t) \)を表すものとして適切だからである。実際、\( x(t) = A \sin{(\omega t + B)} \) の形で書かれているものは(\(A, B \)は時間に依存しない任意の定数)、\( \frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – \omega^{2} x \)を満たす(気になる人は上の式に\( x(t)=A \sin{(\omega t +B)} \)を代入してみよ)。これは一般解と呼ばれ、あらゆる単振動の運動を表現している。具体的に定数\( A, B \)を決めることで、単振動の中でもどのような単振動なのか(振幅が大きいだとか、初めは静止状態からスタートしたとか)が決められる。

従って、我々は、

$$\frac{d^{2} x}{dt^{2}} = \ – \omega^{2} x$$

の形の方程式を見たら、その解は一般的に、

$$ x(t) = A \sin{(\omega t + B)}$$

という形で表現されると思って良い。

単振動の一般解の表現の違い

これは補足であるが、上で求めた一般解、

$$ x(t) = A \sin{(\omega t + B)}$$

以外にも、

$$ x(t) = A’ \cos{(\omega t + B’)}$$

$$ x(t) = A” \sin{\omega t} + B” \cos{\omega t}$$

も一般解になることが証明できる。どれを使えば良いのかは、次の記事で具体的な例を交えながら紹介していきたいと思う。

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