物理学のはじまり その3

本日で古代ギリシアについての歴史は終わります。最後の人物はアルキメデス(Archimedes)です。

古代ギリシア人その3「アルキメデス」

アルキメデスはアリストテレスの時代から100年ほど経った時の人物です。父親が天文学者で、数学の力をメキメキとつけ、結果的に数学や物理の分野で大きな功績を残しています。幾つかリストアップしてみましょう。

  • 位取りにより数を表す方法の発明。(今日では私たちは135という数字のことを、100 が1つ、10が3つ、1が5つのようにして位にわけて数えますよね)
  • すべての球について、それに外接する円柱を考えたとき、円柱の体積はその球の3/2倍である。
  • 半球の重心位置の決定。
  • 力の釣り合いに関する著書『平面の釣り合いについて』では、公理を立てて定理を導く、という現代の数学・物理に近い構造を用いて議論をしている。この定理には有名な「テコの定理」が含まれている。
  • 任意の固体は液体に浸されると、それがおしのけた液体の重さだけ軽くなる。(アルキメデスの浮体の法則と呼ばれる。後に詳しく書きます。)

などなど、もっとたくさんあるのですが、キリがないのでここらへんで。現在は微積分学が発展しているために、普通の理系学生は球の体積だったり表面積は積分で求めます。しかし当時はそんなものはありませんでした。では、どのように示していたのか?

実は「幾何学」です。アルキメデスの一つ前の世代ほどに、エウクレイデス(英語ではEuclid:ユークリッドと呼ばれる)が『原論」というものを出し、当時は幾何学が主な道具でした。我々が現在知っている代数学(1次方程式、2次方程式などなど)はまだ存在すらしていなかったのです。ですから、中学生の頃になんとなくやっていた幾何学、ありましたね。あれは約2300年ほど前の数学なわけですね。驚きです。


静力学についてのアルキメデスの貢献

アルキメデスが物理において大きな貢献をしたものとして、上のリストの4つ目:静力学についての貢献があります。まず、以下に彼が法則(=実験的に成り立つと思われることであり、それを最小限正しいと認めてしまう事柄。これは法則の意味でしたね。)としていたものを書いておきます。ここら辺は読むのがつらいとは思うので、飛ばしても結構です。

静力学についての法則(アルキメデスによる)

  1. 等距離にある等しい重さは釣り合う。等しくない距離にある等しい重さは釣り合わず、大きいほうの距離にある重さのほうへ傾く。
  2. もし、ある2つの距離にある重さが釣り合っているとき、一方に何かを追加するなら、両者は釣り合わず、追加された重さのほうへ傾く。
  3. 同様に、もしある2つの距離にある重さが釣り合っているとき、2つの重さの一方から何かを取り去るなら、両者は釣り合わず、何も取り去られなかった重さのほうへ傾く。
  4. もし、大きさが等しく相似形の平面図形が重ねあわされたとき一致するなら、両者の重心も一致する。
  5. もし、2つの図形が等しくはないが相似形なら、両者の重心も相似の位置にある。相似の図形に関して相似の位置にある点とは、それらの点から等しい角に向かて直線を引くなら、それら直線が、対応する辺と等しい角をつくることを意味する。
  6. もし、ある距離にある2つの重さが釣り合うなら、それらに等しいほかの2つの重さも、同じ距離で釣り合う。
  7. 周が同じ向きに曲がっているどんな図形でも、重心はその図形の内側になければならない。

これはアルキメデスが導入した法則です。したがって、彼は実験的にこれは自明なこと(=あたり前なこと)と受け入れて、そこから何が導かれるのか?ということを考えたわけです。そこから導き出される15個の定理のうち、6つを以下に記します。

静力学についての法則から導かれた定理

  1. 等距離で釣り合う重さは等しい。
  2. 等距離にある等しくない重さは釣り合わず、大きいほうの重さのほうへ傾く。
  3. 等しくない重さは等しくない距離で釣り合うことができる。
  4. 2つの等しい重さが同じ重心をもたないなら、両者を合わせたものの重心は、両者の重心を結ぶ線分の中点である。
  5. 3つの重さのそれぞれの重心が一直線上に等距離に並ぶなら、全体の重心は中央のものの重心と一致する。
  6. テコの定理:「2つの重さは、その重さに逆比例する距離で釣り合う。」

本来「テコの法則」やら「テコの原理」とか呼ばれますが、これはアルキメデスが著書の中で公理から導いた「定理」なるものなので、あえて定理と書かせていただきました。



少し復習

上で言及したことが分からない・忘れた方のために軽く書いておきます。

図1:物理学と数学の違い

図1は以前の記事「物理学と数学の違い」でも用いた図です。物理学は「証明はできないけれど、正しいと思える最小限の規則」のことを法則というのでした。ですから、上に書いた「静力学についての法則」はいったん疑うのをやめよう、というのです。とにかく、正しいと思ってみよう。騙されたと思ってみよう。そういうことです。では、そうなったときに何が必然と導かれてくるのか?それが上に書いた「静力学についての法則から導かれた定理」なのです。

確かに「テコの定理」は実験すれば正しいであろうことがわかりますし、日常的に直感的にわかる方もいるでしょう。ですから「法則」といってもいいのです。ただ、アルキメデスが「法則」としたもの(そこにテコの法則は含まれていないことに注意)を正しいと思い込んでおけば、「テコの法則」は導かれてしまうので、「テコの定理」と書くべきではないかな、と思ったのです。



テコの定理を用いると、重いものを持ち上げることに利用できることが分かります。図2をご覧になってみてください。

図2:テコの定理の直感的理解

どっちのほうが楽でしょうか?みなさんも日常で経験したことがあると思います。上側のほうが楽ですよね。では、このことをテコの定理を用いながらもう少し深く考えてみましょう。赤色の箱が100kgであるとしておきます。また、図2の上側の図において、左端から支点まで:支点から右端まで=2:1としておきましょう。頭の中で図3のようにイメージできればOKです。

図3:イメージしてほしいこと!

さて、テコの定理をもう一度見てみましょう。

テコの定理:「2つの重さは、その重さに逆比例する距離で釣り合う。」

つまり、上の図3においては、押す重さ:100kgの重さ=1:2となれば釣り合うということをテコの定理が語っていることになります。この計算から、押す重さ=50kgの重さということになります!したがって体重50kgの人が左端に乗っかると理論的には釣り合うことになりますね。

では、図2の下側について考えてみるとどうでしょうか。左端から支点までの距離:支点から右端までの距離=1:2としておきます。図4のように考えられます。

図4:次にイメージしてほしいこと!

同様に考えまして、押す重さ:100kgの重さ=2:1なので、押す重さ=200kgでなければ釣り合いません!!めちゃくちゃ大変です。

このことは当時大変応用されました。戦争で重い弾丸を敵兵に投げ飛ばすのにもつかわれました。戦争で敵の船を持ちあげて壊すのにもつかわれました。このようにして、アルキメデスの頭脳は戦争に活かされていたようでもありました。


アルキメデスの浮体の法則

最後の浮体の法則を扱いましょう。これはいわゆる「浮力」です。高校生の頃、これがまったく理解できなかったのを覚えています。意味が分からない力だと思っていました。でも、誰もが経験的にわかる力です。プールやお風呂の中では身体が軽く感じます。本来なら重力にしたがって地面におっこちる物体でも、水があると浮いてしまうことがあります。2300年前のアルキメデスは、これを経験的に受け入れるもの=法則として理解し、つぎのようにまとめました。

アルキメデスの浮体の法則:「任意の固体は液体に浸されると、それがおしのけた液体の重さだけ軽くなる。」

ただ軽くなるという事実はだれでも知っています。それを一歩進んでどれくらい軽くなるのかというのを定式化したことは本当に素晴らしいですよね。この実験の証明は、当塾においてもやってみようと思う実験の一つです。そのやり方は次のようなものです。図5を見てみましょう。容器内は水とします。

図5:アルキメデスの浮体の法則確認実験の一例

とても不思議だとは思いませんか?プラスチックでできたほうは大体1kgの重さなのですが、水の中に入れておくと秤はほぼ0kgを示すのです。一方、鉄をまったく同じ形で用意して沈めると、元の7kgから1kg分だけ軽くなるのです。これをいろんな固体(鉄以外のもの)でやってみてもしも同じような結論が得られたら・・・・。さらには、水ではなくて油でやってみたとして、比重が異なる(同じ体積をとっても水よりも油のほうが軽いことを言っています。サラダにかけるドレッシングにおいては油が上のほうに浮いてくる現象はご存知の方も多いでしょう。)わけですから、違う結果がでるかもしれません・・・。実はその結果がうえにまとめた「アルキメデスの浮体の法則」なのです。なんでかはよくわからないが、液体の中ではおしのけた液体の重さだけ自分の重さが軽くなっているように感じるというわけです。


アルキメデスの浮体の法則を用いた簡単な計算

そこでちょっとだけ計算をしてみましょう。体重60kgの青年の身体の1cm^3(立方センチメートル)は何gくらいなんでしょうか?これを密度といいます。我々の密度を求めてみたいと思います。(これは人の体によって個人差がありますので、体重が60kgだからといって必ずみな同じ密度にはならないことには注意してくださいね)

仮に彼の密度が1cm^3あたり1gであると仮定してみましょう。すると60kg=60000gより、この青年は60000cm^3の体積を持つことがわかります。一方、水の密度は同じく1cm^3あたり1gなわけですから、彼が水のプールに入ることで本来そこにあったはずの水を押しのけてしまった分の重さは60000gの重さであることがわかります。しかし、アルキメデスの浮体の法則がいうところには

アルキメデスの浮体の法則:「任意の固体は液体に浸されると、それがおしのけた液体の重さだけ軽くなる。」

というのですから、今回押しのけた水の重さ=60000gの重さ=60kgの重さであることを考えれば、彼の重さは60kg-60kg=0kgとなり、重さが消滅します。つまり、彼は理論上水の中で静止します。でも、これは経験的にはおかしいですよね(笑)。プールでも潜っていれば私たちは沈みます。ですから、引き算しても0kgにならないようにするためには、引く数がもっと小さければよい。水の密度は変わりようがないから、「彼の身体1cm^3は1gよりは大きい重さである」ことは予想がつきますね。分からない方のために例を取ります。仮に彼の身体1cm^3が2gであるとしてみましょう。上と同様に計算をしてみてください。彼の体積は30000cm^3と分かります。つまり、彼がプールに入ることで押しのけた水の重さは30000gの重さ=30kgの重さとなり、彼の体重は60kg-30kg-30kgとなることがアルキメデスの浮体の法則からわかるのです。

さて、自分の密度を求める話でしたね。それなら、水中に体重計をおいて、完全に身体をプール内に沈めた状態で乗っかってみればよいのです。もしも体重計が30kgを示せば、上でやった計算から密度は2g/cm^3とわかりますね。30kg以外の値でも、逆算して計算しきることはそこまで難しくないと思います。


とても長い記事になってしまいましたね。いかがでしたでしょうか?古代ギリシアという大昔にアルキメデスが物理学に貢献したことを少しでもわかっていただけたでしょうか。このあたりでかなり物理学が発展してきています。アルキメデスが大きな仕事をしたといっても過言ではないでしょう。

古代ギリシアの話はこれにて終わりになります。これからも歴史の話は書かせていただきます。並行して様々なことも書いていくかと思います。

読んでいただきありがとうございました。

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